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歯とアンブシュア

管楽器奏者にとっての歯は楽器のたいせつな一部です。
前歯にクラウンをかぶせたあと音がおかしくなったり、
咬合干渉を起こしている歯を抜いたところ、
それが上の8番と言う奥の歯であったにもかかわらず
音が出しづらくなったという例もあります。
どんなに奥の歯でもアンブシュア(管楽器を演奏するための口唇、頬、舌の形)に影響が出るのです。
歯列不正は口輪筋を不自然に歪ませるので、
音程を一定に保ったり、
長いピアニシモの音を出しづらくなります。
乱杭歯の場合、唇側の面をCR(コンポジット・レジン=光で固める、歯と同じ色のペースト状のプラスチック)
で修正していけば、
空気の流れが改善して音が出しやすくなります。
また、転位歯がマウスピースに当たって口唇が傷つく場合も、
尖った先端の削除やCRによる修正で、ある程度対処できます。

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歯列と息の流れ

きれいな歯列によるスムースな息の流れはいい音につながります。

しかし、乱杭歯であっても長年第一線で活躍している演奏家は、

練習でその不利な面を克服していますので、

いまさら歯列を整えることは、

すでに完成されたアンブシュアを崩してしまうため

禁忌となります。

その人の歯や口の状態にあわせて舌や筋肉の微妙なバランスが

完成されてしまっている場合は、もう変更はきかないのです。

できればプロになる前に...

たとえば初めて楽器を手にする中学生ぐらいの時に、

あるいは音大をめざす時に、

問題のある歯や歯列を直しておくことが望ましいと考えます。

楽器によって歯との関係はそれぞれ異なりますから、

楽器別に歯の扱いに対する注意点も当然異なります。
 

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金管楽器と歯

金管楽器では、
マウスピースが小さい順に歯列の影響は大きくなります。
つまりホルン、トランペット、トロンボーン、
チューバの順でしょうか。
マウスピースが小さくなるほど、
口唇に当たっている部分は小さくなりますから、
テンションのかかる口唇の面積は狭くなり、
歯の音への影響は大きくデリケートになります。
ただ、マウスピースを口唇のどこに当てるかは個人差があり、
実際に演奏の状態を見てみないとわかりませんが、
その範囲の歯列は滑らかな状態が望まれます。
マウスピースをご持参いただき、
治療しながら音の出を確かめてもらうのが安全と言えます。

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木管楽器と歯

二枚リードの楽器には、オーボエ、ファゴットがありますが、
このなかでオーボエは唇を歯の内側に巻き込んで、
リードをその間にくわえて演奏しています。
葦製のリードは小さいほど、歯の影響が大きく出ると思われます。
歯の乱れや顎の偏位があると、活舌(タンギング)が悪くなるだけではなく、口唇が傷ついてしまう恐れがあります。
ファゴットのリードはオーボエと同じ形ですが、
サイズが大きいので
歯への影響はオーボエよりは小さいと言えます。
クラリネットは竹製の大きなリードを
歯でくわえて吹いていますから、
演奏については歯列の影響というより、
下顎を前に出しているための顎関節への影響や前歯への影響が
大きいと考えられます。
前歯にかかる長時間の圧力の影響を
常に考慮しなくてはいけない楽器です。

Dental x-ray

充実した演奏活動のために

管楽器奏者にとって歯はたいへん重要であるにかかわらず、

歯や歯列のことにはあまり注意が払われていません。

国内最高峰といわれる音楽大学の管楽器科においても、

口腔や歯列の話はおろか、

歯に関する基本的な事柄の教育さえ

まったくされていないのが現状です。

大事な演奏会を前にしての歯のトラブルは、

演奏会を台無しにしてしまうおそれもあります。

診療をしていて、

「半埋伏の親知らずが腫れたらどうするのだろう」

「この歯並びで長年プロとしてやっていけるのだろうか」

などと老婆心ながら心配になることがあります。

管楽器奏者にとって楽器というのは、

歯を含めた総合的なものといっても過言ではないでしょう。

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